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コラム:伝書鳩を使ったデータ通信

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「RFC」という用語を聞いたことがあるでしょうか。RFCとは「Request for Comments(コメント求む)」の略で、インターネット技術の標準化などを行なっているIETFという組織が発行している技術仕様などについてのドキュメント(文書、証明書)です。各ドキュメントは、英語で記述され、「RFC xxxx」のように通し番号が振られています。そして全てのRFCはインターネット上で公開され、誰でも自由に閲覧することができます。私自身、以前民間企業に勤めていた際には、ソフトウェア開発のためにTCPに関するRFC793やRFC813を熟読しました。2018年10月現在ではRFC8485が公開されており、8000以上ものドキュメントが作成されたことになります。詳しくは、RFC一覧(https://tools.ietf.org/rfc/)を参照してください。もちろん、全てのRFCがインターネット標準となっているわけではありません。標準化の前段階であるもの、覚書、実験レベルにとどまっているもの、標準化の過程で破棄されたものなども含まれています。

RFCの例(RFC793)
RFCの例(RFC793)

これらのRFCの中にはちょっと変わったドキュメント群があります。4月1日(つまりエイプリルフール)に公開されるジョークRFCと呼ばれるもので、冗談が記述されたRFCです。内容は冗談ですが、正式に番号が振られ、技術文書としてきちんとしたフォーマットで記述してあり、インターネット技術の知識がある人が読むと思わずクスリとしてしまうものになっています。技術者とは意外と冗談が好きなのです。

このジョークRFCの中でも非常に秀逸で、人気があるものの一つに、「RFC1149:A Standard for the Transmission of IP Datagrams on Avian Carriers(鳥類キャリアによるIPデータグラムの転送)(https://tools.ietf.org/html/rfc1149)」があります。タイトルの通り、伝書鳩によるインターネットパケット送信に関する技術について記述されています。どのようなことが書いてあるか例を挙げてみます。

・「鳥類キャリアは、高い遅延・低いスループット・低空飛行でのサービスを提供する。」 (およそ実用には向かないように思えますが、ジョークRFCならではの表現でしょう。また、伝書鳩ということで低空飛行という用語が混ぜられています。)

・「3次元エーテル空間を活用できるため、春先を除けば複数のキャリアを使用しても著しい相互干渉は発生しない。」(エーテルとは昔、空間内に存在すると考えられていた仮想の物質で、イーサネット(Ethernet)の「イーサ」の語源となったものです。)

・「IPデータグラムは紙に16進数で印字し、鳥類キャリアの脚に巻きつける。帯域幅は脚の長さに制限される。」(通信の帯域幅についても真面目に考慮されています。)

RFC1149
RFC1149

RFC1149はもちろん冗談ではあるのですが、実は伝書鳩を用いて実際にパケットを送信する実験が既に行なわれています。

一つは2001年にノルウェーで行なわれたもので、9羽の伝書鳩を放ち、1時間から1時間半の間に4羽しか帰ってこなかったので、「損失率は55%、応答時間は3000秒~6000秒以上、実用には耐えられない」と結論付けました。

もう一つは2009年に南アフリカで行なわれたもので(当時、南アフリカのインターネット回線容量は大変不足していました)、伝書鳩による通信は4GBのデータ送信に約2時間かかった一方、インターネット経由での送信は同じ時間でその4%に留まり、インターネット通信が伝書鳩に敗北したというものです。

RFCは英語で記述されていますが、それほど難しいドキュメントではないので、インターネット技術と英語の勉強を兼ねて学生に翻訳させている情報系の大学もあります。本校の学生の皆さん、そして本校への進学を検討している高校生の皆さんも、翻訳にチャレンジしてみてはどうでしょうか。機会があれば、他のRFCについても紹介したいと思います。

(文責:情報システム技術科 菅原 智裕)

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