先のコラムで「自動車」を取り上げましたが、それに負けず劣らず人気があるのが「鉄道」です。作曲家のドボルザークも鉄道マニアでしたが、鉄道が子どもから大人まで幅広い人気を博しているのは周知の事実です。今回はその中でも「新幹線」を取り上げてみました。
東海道新幹線が開業したのは、東京オリンピック開催と同じ1964年の10月1日です。0系新幹線「ひかり号」が華々しく登場しました。意外なことに始発列車は満席ではなかったそうですが、現在まで脈々と続く日本の高速鉄道が産声を上げた瞬間でした。
このときすでに欧米諸国では、高速輸送手段が航空機に徐々にシフトしていたようで、高速鉄道はすでに時代遅れと見なされていました。しかし現在でも世界各国には高速鉄道が存在します。それは大量輸送と定時性において鉄道に優位性があるからでしょう。特に日本においては、東京から大阪までの移動に重点が置かれて新幹線の誕生につながったと言えます。航空機がこれだけ発達してもこの区間は新幹線と厳しいライバル関係にありますし、リニア計画も進行中です。
新幹線は日本の高度経済成長期のシンボルとして、西へ北へと延伸していきました。山陽新幹線が出来たときのキャッチコピーは「ひかりは西へ」、東北新幹線が出来たときは「ひかりは北へ」でした。車両も長らく0系の時代が続きましたが、100系、200系、300系、500系、700系、800系と目を見張るような進歩を遂げました。
その中で、最も特徴的な変化は先頭車両の顔の変化です。「団子鼻」の愛称で知られている0系の顔は、速度の二乗に比例する空気抵抗を大幅に減らしました。300系以降になると、その顔はさらに変化しましたが、これは新幹線がトンネルは突入するときに生じる圧縮波が原因となって発生する「トンネルドン」という騒音を解消するために流体力学の理論から生み出された技術の成果でした。この他にも様々な新技術が導入され、新幹線は現在まで高速大量輸送手段として現役の交通手段になっています。
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0系新幹線 | 100系新幹線 |
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200系新幹線 | 300系新幹線 |
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500系新幹線 | 700系新幹線 |
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800系新幹線 | 超伝導リニアL0系 |
私も小学生の時に新幹線で東京まで行ったことがあります。そのときは子ども心に流線形のスマートな新幹線のかっこよさや巨大さ、そして車窓に映る様々な景色に目を奪われた記憶があります。なかでも富士山のすばらしさは一番の思い出です。山といえば裏山くらいしか知らなかった田舎の小学生にとって、富士山の偉容は子どもの心にさえ深く印象に残る一生の思い出となりました。
乗り物大好きな子ども達にとっても、風情を楽しみたい大人たちにとっても、鉄道、とりわけ新幹線は無くてはならない交通手段ではないでしょうか?近年、日本は新幹線の技術を他国の高速鉄道に輸出するほどまでになりました。技術の高さはもちろん、安全性においても世界が日本の新幹線を認めている証だと言えるでしょう。これまた日本の最先端技術が産んだ、世界に誇ることの出来る技術のたまものだと言えると思います。そして近い将来、リニア技術を投入した最高速度600km/hの超伝導リニアL0系も、新幹線の発展型として私たちに夢を与えてくれるものだと期待しています。
(文責:精密機械技術科 講師 田中 誠一郎)